2013年7月18日木曜日

モコレコメン:30年を経ての再会/展覧会「レオ・レオニ 絵本のしごと」

小学校の頃、年度始めに教科書をもらうのがとっても楽しみでした。
特に国語の教科書は、もらったその日には読破していた、という人は他にもいらっしゃるのでは?

国語の教科書に載っていた話というのは、大人になってもふと思い出したり、全く別の場所で子ども時代を過ごした人とあるフレーズを共通して覚えていてもりあがったりするものですね。

そんな私が一番印象に残っていたのが、ねずみがおもちゃのねずみと出会う話でした。
ストーリーもさることながら、強烈だったのはその美しい絵です。
「描いた」んじゃないよね?このぐるぐるした模様(マーブル調)はどうやってだしてるんだろう?

でもタイトルや作家などを覚えておらず、この話のこともたまに思い出すけど探し出すまででもなく…。
この話のタイトルが「アレクサンダとぜんまいねずみ」、作者が「レオ・レオニ」、絵本も出版されている(正確には絵本の刊行があって、教科書に採択された、という順序ですね)ということを知ったのはここ数年のことでした。


そんなわけで!とようやく本題。
8/4(日)まで渋谷の東急Bunkamura「ザ・ミュージアム」で開催中の「レオ・レオニ 絵本のしごと」展に行ってきました★


展覧会は会期末になると混むものですが、既に週末はけっこう混んでいて、物販コーナーも大賑わい、という話を聞き、急いで行ってきました。
平日の午前中、10時のオープン直後でも各展示を見るには少し列ができている、という状態。

ゾーンは4つに分かれていました。
こうした一人の作家の軌跡を追う展示会だと、時系列でその章が組み立てられていることが多いかもしれませんが、今回は時系列ではなく、絵本(生涯で40冊もの絵本を描いたそうです!)の根底に流れるテーマやメッセージによって分かれていました。

絵本の原画や資料などが、その絵本ごとに並べられています。


まず【絵】としての感想。

例の「アレクサンダとぜんまいねずみ」の原画もありました!
子どものときに不思議に感じていたことが判明。

コラージュだったんですね。
ねずみの体や耳、目、しっぽなど、いや、この絵本は基本背景なども全て、
色紙を切ったりちぎったりしたものでした。

地面やとかげの体などはマーブルに印刷された紙(もしかしたらご自身で染めたものもあるかもしれないです)だったのです。
また、何となくエキゾチック(という言葉は知らなかったけど)に感じられていたのは、千代紙などを使っていたからだ、と知ることができました。


その他の作品も見ると、さまざまな手法を使っていたことがわかります。
コラージュの他に水彩・油彩・クレヨン・色鉛筆などで描かれたものもあるし、
複数の手法を織り交ぜた作品もありました。
「ストーリーにもっともふさわしい手法を使おうと努めている」と語っていたそうです。

いずれにしてもその根底には圧倒的なデッサン力がある、ということは石のスケッチのコーナーで実感することができました。

彼が絵本をはじめてつくったのは50代に入ろうとするところで、
その時点で既に第一線で活躍する著名なグラフィック・デザイナーだった、ということでも納得できた点がいろいろ。

眺めていて感じられる、「完成されている」という気持ち良さは、
確かにデザイン性の高いポスターみたいだな、と。
しっかりデザインのスキルをもっているから、計算されつくした世界があるんですね。

それと「感情」みたいなものが共存しているのがすごいなと思いました。
ねずみはみんな同じ顔をしているし、工業製品のように無機質的なようでいながら、
すごく表現豊かで奥が深い、っていう独特な体験ができるってすごい。
解説によると、主人公の大きさや配置によって、心の動きや感情を見る側に伝えられるのも、グラフィック・デザイナーの仕事で培った手法なのだそうです。


もう一つは【主題】について。

それぞれの絵本が伝えたいメッセージ。
子どもはそんなにメタ的にこの本が伝えたいのは…なんて思わないし、そんなことばではないところで受け取って、密かに(自分でも気付かないところで)自分の中のなにかを形作るのかな、と思います。
それがその話をずっと覚えていたり、好きでい続けたりするという現象に残っているというか。

大人になって、こういった形で生涯のしごとを見せてもらうと、そのメッセージの深さとか、一貫性、それを絵本という形で表現しきることのすばらしさに感嘆します。
いくつになっても他の人とずれたことをしたくない、かと思いきや自分らしさを追い求めたいなんて悩むし。
「結局、選ぶのは自分」とか、もしかしたら今が一番実感しているかもしれないし。
決して絵本は子どものためだけのものではないんだなー。


展示会の構成や解説もわかりやすく、とっても好きな感じでした。
現在の国語の教科書も展示されていました。
かつての私のように、「アレクサンダとぜんまいねずみ」に心奪われている子どもたちがいるはず★

「原画」が発するエネルギーや色彩のあざやかさもすごかったです。
実は、帰って来てから絵本を見て実感しました。
原画のほうがきれいだったな…って思っちゃいました。
もう30〜40年たっているものなので、経年変化や汚れ、コラージュのズレなどあるんだけど、
やっぱり本物は違う…。

印刷された絵本は文字も載ってるしね。1970年代っぽいなーという文字組みのズレとか、最近はあまりつかわないなというフォントや微妙な文字間も、それは味があって好きですが。
もちろん絵本は図録ではないから、求めるものが違いますね。
だからこそ、こうして足を運んで原画をみるという経験にも意味があるのでしょう。


あと、きっと一番有名な作品は「スイミー」ですよね。
教科書に採択されているのも、こちらのほうが多いと思います。
お子さんが学校の宿題で「スイミー」の音読を自宅でしていた、と言っている人が何人かいました。

スイミーの原画は出ていませんが、スイミーの世界が映像になって、大きなスクリーンで見られるコーナーがあります。
自分も海の中にいるように囲まれていて、画面に近づくとさかなが逃げる!
楽しかったです。

まだ人ごみをかきわけずに買い物ができる物販コーナーは、かなり絞ったつもりですが、それでも普段の展示会のときよりもたくさん買い物してしまいました。

やっぱりグッズ映えしますよね〜。
こういうところでもグラフィック・デザイナーということを実感します。

特に買ってよかった!というのが「レオ・レオニ メモリーゲーム」。
神経衰弱ができるカードです。
絵柄が20種類以上!紙もしっかりと厚く、小振りなのもかわいいです。
3歳児ともぎりぎりゲームが楽しめることがわかりました。


絵本も日本語、原語(英語)、かなり揃っていました。
ようやく「アレクサンダとぜんまいねずみ」を購入し、30年ぶりに全文読み直しました☆
「スイミー」も!こっちはやっぱり私初読だったっぽいです。



「レオ・レオニ 絵本のしごと」展は、Bunkamuraでは8/4(日)まで(会期中無休)。
今後の巡回予定は
2013年12月7日-2014年2月16日 北九州市立美術館分館
2014年4月26日-6月8日 刈谷市美術館
とのことです。

Bunkamura開催の特設ページはコチラです。

  

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